青春シンコペーション


第7章 すれ違う心(1)


「ふうん。それで二人揃っておめおめと戻って来たという訳ですか?」
項垂れている井倉とフリードリッヒを前にして、ハンスが言った。
「はい。申し訳ありません」
井倉が一層深く首を垂れた。
「でも、それは井倉のせいじゃない。あれは仕方がなかったんだ」
フリードリッヒが言い訳する。
「仕方がなかった? そう。確かに井倉君は空手の心得なんかなかったんだからね。でも、おまえは違う。そうだろ? フリードリッヒ! あれほど大層な口を利いて出掛けておきながら、お嬢様は攫われましたで済むか!」
鋭い口調でハンスが言った。

「この落とし前、きっちり付けてもらうからな!」
いつもとはまるで雰囲気が違う彼の態度に井倉はビビッた。
(ハンス先生……怒ると怖い!)
「わかった。今回のことの責任は私にある。私のできることならどんなことでもしよう。それでいいか?」
フリードリッヒが言った。
「当然だ!」
忌々しそうにハンスが答える。

「でも、彼女はいったい何処に連れて行かれたんでしょう?」
井倉が訊いた。
「自宅だよ」
ハンスが小さな端末の画面を広げた。詳細な地図の上に光点が一つ点滅している。
「これが、今彼女がいる現在地さ」
「それって……」
井倉が恐る恐る訊いた。
「こんなこともあろうかと彼女の服に発信器を仕掛けておいたんです」
さらりと言った。
(それって犯罪なんじゃ……)
井倉の心を見透かすようにハンスが笑う。
「合法だよ」
「でも……」

自らの良心を納得させられずに、葛藤を続けている井倉にハンスが結論を突きつけた。
「君はあんな屑のような男に彼女を盗られてもいいんですか?」
「それは……」
井倉は言葉に詰まった。
(でも、お見合いの相手は確か裏山総理の甥子さんだとか……」
もしかしたら、その男と結婚した方が彩香のためになるのではないか。家柄としても申し分なく、釣り合いも取れるだろう。やはり、自分には不釣り合いだ。所詮、彼女とは生きる世界が違うのだと、考えなくもなかった。真に彼女の幸せを願うなら……。
(そうだ。ここで身を退くべきなんだ。いや、そう思うことこそが既におこがましいことなのか? 彼女は、僕に対して何の感情も持ち合わせてはいないのだから……。すべては僕の独り善がり。僕の思い込みに過ぎないんだ)

「浮屋信次(うきやしんじ)」
ハンスが言った。
「彼女の見合いの相手です。僕は調べました。本当にろくでもない男です。あんな奴のところに行って幸せになれる筈がない。僕は彼女の師匠として全力で潰しに掛かろうと思います」
ハンスが宣言した。
(潰すってそんな……)
井倉の心臓は波打った。

そこへ美樹がやって来て言う。
「やっぱり無理。彼女、電話には出なかった。それに、今、自宅にはおりませんって、有住家では、取り次いでももらえなかったわ」
「そうか。なるほどね。でも、手は打ってある。心配することはないよ」
そこへ電話が掛かって来た。ルドルフからである。それから長いFAXが届き、黒木が帰って来て彼に何事か報告している。
(いったい何が起きてるんだ? ハンス先生はいったい……)
目まぐるしく変化する状況の中で井倉は困惑するばかりだった。


その頃、有住家では、父の書斎で娘の彩香が話を切り出していた。
「お父様、わたし、このお見合いをお受けしようと思います」
「そうか。それはよかった。賢いおまえのことだ。必ずわかってくれると信じていたよ」
書類に目を通していた父が顔を上げ、笑みを浮かべる。
「浮屋君との縁談はきっとおまえに幸福をもたらしてくれるだろう。その上で、ピアノをやりたければ続ければいい。ピアノの趣味は決して悪いことじゃないからね。むしろ、上流社会では常識ともいえる一般教養の一つだ。サロンやパーティーの場では、誰もがおまえの演奏に聞き惚れてくれるだろう」
「そうですわね。きっと……」

娘の表情には僅かばかりの逡巡が見え隠れしていた。が、父は備え付けのサイドボードからグラスを取ると、娘にワインを勧めた。
「ありがとうございます。でも、今回のことで、ハンス先生には大変ご迷惑を掛けてしまいましたわ」
「そうだな。まあ、その件は、あとで私からそれ相応の謝礼を贈ってやるさ」
父親は素っ気なく答えると、サイドボードに飾られた帆船の模型を見て言った。
「それよりもどうだ? これが今建造中の豪華客船『シーフラワー号』だ。この秋完成する予定だ」
「美しい船ですのね」
それは貴婦人のような帆船の優雅さに加え、どんな荒波にも屈しない厚みのある巨体を持ち、動力には最新の技術を導入、衛星情報を駆使したレーダーを搭載した有住自慢の船だった。

「そうだろう。これはおまえのために造ったんだ」
父は満足そうに目を細めると、そっと船の船腹を撫でた。
「日本では最大級の豪華客船になる予定だ。この秋には沖縄への就航も決まっている。最高のサービスと品質を誇る動く高級ホテルという訳だ。晩餐会ではぜひ、おまえのピアノを皆に披露して欲しいと思っている」
「まあ。船でのパーティー? 素敵だわ」
「引き受けてくれるかい?」
「もちろんですわ、お父様」
彩香もうれしそうに頷く。そんな娘を抱き締めて父は言った。
「この船はおまえの物だよ、彩香。そこで、浮屋君との婚約発表もするんだ。どうだ? 素敵だろう?」
「え、ええ」
彼女は躊躇いがちに頷いた。


「彩香さん……」
ハンスの家のリビングから、井倉は暗い夜の海を見ていた。無論、その後、彼女からの連絡はない。フリードリッヒはホテルに帰り、ハンスは地下に降りている。今日は一人でやって来たYUMIにレッスンを行っているのだ。美樹は出版社の人と仕事の打ち合わせだと言って出掛け、黒木は和室に持ち込んだパソコンでデータの整理をすると言って籠っていた。

(ピアノの音……聞こえない)
猫達はソファーの上でまるくなって寝ていた。部屋のあちこちに飾られた人形やぬいぐるみ、観葉植物でさえ、じっと息を潜めてこちらを見ている。そんな気がした。
いつもは賑やかなこの家にも、そんな静寂が訪れる瞬間があるのだ。井倉は妙に胸の奥が空っぽになったような冷たさを覚えた。
その時来客を知らせるベルが鳴った。

「こないだのパーティーの写真出来たから持って来たよ」
それは、気のいいアメリカの青年マイケルだった。
「あれ? 井倉君、ハンスはいないの?」
「今は下でレッスン中なんです」
井倉が言った。
「レッスン? こんな時間に? ピアノの先生って、案外大変なんですね」
マイケルの日本語はかなり流暢だった。片言しか日本語を話せないフリードリッヒと違い、マイケルは言葉だけでなく、性格も人懐こくて好感が持てた。

「井倉君も見る?」
写真を並べて彼が言った。様々なシーンと人々の豊かな表情が写っている。その中に彩香の姿もあった。フリードリッヒと並んでいる笑顔の写真だ。
「いい表情をしてるでしょう? 彼女」
マイケルが言った。
「ええ。ほんとに……素敵な笑顔ですね」
その笑顔が自分に向けられたものだったら……と思うと、井倉は少し寂しくなった。

「僕もこんな素敵な笑顔を持ったヤマトナデシコ探してました」
突然、マイケルが言った。
「え?」
彼の言葉に思わずドキッとする。
(それって、まさか……)
彩香の筈がないとわかっていながら、井倉は意識せずにいられなかった。
「ついに見つけたんです。僕のヤマトナデシコちゃんを!」
マイケルが叫んだ。

「彼女、晴海ちゃんって言うんです。すっごく可愛いんだ。僕ってハッピー!」
本当に幸せそうな顔をして彼は笑った。
「そうなんですか」
井倉はちょっぴり複雑な気分で彼を見た。
「彼女は高校の先生をしていて、剣道の顧問を……」
聞かれもしないのに、マイケルは話し始めた。が、その時、レッスンを終えたハンスとYUMIが出て来た。

「こんばんは!」
彼女はリビングにいた井倉とマイケルにちょこんと頭を下げると玄関へ向かった。
「あ、YUMIちゃん、今日はお迎えはいないの? 僕が送って行ってやろうか?」
井倉が訊いた。が、彼女は微笑して言った。
「ううん。大丈夫。家、すぐそこだから」
「でも……」
彼女はアイドルなのだ。彩香のこともあるし、もし途中で何かあったらと思うと、井倉はひどく心配になった。

「そうだね。じゃ、僕が送るよ。井倉君はマイケルの相手をしてて」
ハンスが言って彼女に付き添った。
(僕って、そんなに信用されてないのかな?)
井倉は少し暗い気持ちになった。
(仕方がないよね。結局、僕は彩香さんのこと守れなかったんだし……。どうせ、僕なんか何をやったって……)

しかし、数分もしないうちにハンスは家に戻って来た。
「あれ? 先生、YUMIちゃんは? 駅まで行ったんじゃなかったんですか?」
井倉の質問にハンスが軽く手を振って答える。
「ちゃんと送って行きましたよ。自宅の前まで」
「え? そんなにご近所だったんですか?」
井倉が驚く。
「まあね。ところで、マイケル、例のことわかった?」
ハンスが訊いた。

「はい。アメリカの週刊誌にすっぱ抜かれた浮屋のスキャンダル。発売と同時に回収されましたが、一部押さえてあります」
「ありがとう」
(浮屋のスキャンダル記事だって?)
マイケルが開いたグラビアを覗き込んで、井倉は思わず声を上げそうになった。裸の男女の淫らな写真とUkiyaの文字。
「これってもしかしてあの……」
井倉は思わず絶句した。

「そう! 奴がアメリカへ留学していた時、やらかした乱交パーティーと不正入学を暴いた記事です」
ハンスが言った。
「そんな……」
(こんな男に……!)
怒りが湧いた。
「奴は、アメリカでも金をばら撒いて、好き勝手放題やっているようなしょうもない男なんです。そもそもアメリカへ留学したのだって、日本で事故を起こし、それを隠蔽するために身を隠すためだったんじゃないかという疑惑があるのです」
「酷い……」
井倉は拳を握った。

そこへ電話が掛かって来た。
それは飴井からだった。浮屋の日本での素行調査を依頼していたのだ。結果がどんなものだったかはすぐに想像がついた。
「わかった。すぐに資料を送ってくれる? まったく、知れば知るほど呆れますね」
ハンスが電話を切り、何か言い掛けた時、また別の電話が掛かって来た。
「ああ、ジョン。調べてくれた? ありがと。それで……明後日? OK。わかった」
二度目の電話は彩香の見合いの自国と場所を特定できたという知らせだった。

「お見合いの期日は明後日の6時。ニューサマーホテルのフレンチレストランだそうです。いいね? 井倉君、もうあとへは退けないですよ」
「は、はい」
そう返事をしながらも、井倉は驚きを隠せなかった。
(どうしてそんな情報をこんなに速く調べられるんだ)
「それじゃ、マイケル、マスコミの方は頼んだよ」
ハンスの言葉に彼は笑顔で頷く。

「OK! 久々に楽しい仕事ですね」
「詳しいことは決まり次第、連絡するよ」
「それじゃ」
そう言うとマイケルは席を立った。
「バイ! 井倉。しっかりね」
「え? はい。お気をつけて」
井倉が見送る。

そこへ美樹がお客を連れて帰って来た。一人はクランベリー出版の増野。そして、もう一人は井倉の知らない若い男だった。
「こんな夜分にすみません」
増野が言った。
「いえ、大丈夫です」
ハンスが微笑する。が、隣の男に視線が行く。
「はじめまして。僕、春那裕(はるなゆう)です」
「春那って……。あの声優の……?」
ハンスが少し眉を潜める。
「はい。声優の春那です。よろしくお願いします」
爽やかに挨拶する。

(この人があの……)
井倉も名前だけは知っていた。ハンスが気にしていた人物である。
思わずハンスの左手を見た。そこには薄い十字の傷痕がある。春那本人は知らないだろうが、彼はその原因を作った男なのである。
(大丈夫なんだろうか? この二人……)
井倉の脈が早くなる。
「彼、今度、姫乃君の作品のドラマCDに出演することになったのよ。偶然会ったからみんなでお茶しちゃったの。それで、せっかくだからハンスにも挨拶して行きたいって……」
美樹が説明する。
「姫乃君の本ってことはBLのお話ですか?」
ハンスが訊いた。
「はい。BLのです」
春那はまた爽やかに返答する。

(ビ、BL? そういえば、本屋に並んでいるの見たけど、確かに上半身裸のイケメン二人が抱き合ってる表紙だった……)
自分が出演する訳でもないのに、井倉は妙にどぎまぎした。
「そうですか。よかったら中へどうぞ」
ハンスが言った。
「でも、もう遅いですし……」
増野が遠慮がちに言うと、ハンスは構わないから上に上がるように勧めた。
「それじゃ、ちょっとだけお邪魔します」
二人はリビングへ通された。
(ハンス先生、ちゃんと大人の対応もできるんだな)
井倉はほっとして紅茶を持って行った。

「それでね、しおりちゃんがあんなに一生懸命署名集めてること、姫乃君はまるで知らなかったんですって……」
美樹が世間話をするように言った。
「取り合えず、僕は集まった3枚だけ持って来たんですけど、彼、それ聞いたら泣き出しちゃって……。ほんと、純粋な方なんですね。本ではすごく過激なこと書いてるから、本人ももっとすれてるのかと思ってました」
春那が言った。

「彼はいい子ですよ。あんないい子が学校を退学になるなんてとんでもない。私も出版社の人間として責任がありますし、できるだけのことはしたいと思ってるんです」
増野も言った。
「僕の方でもまだ署名いけますよ。声優や劇団の仲間に声を掛ければあと100や200集まると思いますし……」
春那が熱心に言う。
「そうだ。さっきマイケルにも頼めばよかった」
ハンスが思い出して言った。
「あら、だってリンダには頼んだんじゃないの?」
美樹が言った。

「そうだけど、マイケルにはマイケルのルートがあるかもしれないし……。いざとなったらマスコミに取り上げてもらうことだって……」
ハンスは携帯を取り出すと急いで彼に連絡をした。
(マスコミか。そいつはいい。うまく使えば百人力だ)
増野もその案に賛成した。

「美樹ちゃん、まだ署名用紙、余分にありましたか?」
ハンスが訊いた。
「ええ。コピーする?」
「一枚送ってくれれば、あとは向こうで何とかしますって……あとでFAXしてくれる?」
「いいわよ」
「皆さん、本当にありがとうございます」
増野が頭を下げた。
「増野さんのせいじゃありませんよ」
ハンスが言った。

「いや、私の責任でもあるんです。実は、うちの若い者が原稿を印刷所に回した時、うっかり彼の本名で出してしまったという重大なミスがありまして……。現役高校生ということだったので、賞を取った時には名前を伏せてたんですが……」
「それって、彼が本名で応募したってことじゃなかったんですか?」
美樹が驚いて訊いた。
「いや、違うらしいです。最も彼の場合、本名がペンネームみたいな雰囲気でしたので、チェック機構が働かなかったようです。いや、プロとして誠にお恥ずかしい次第です」
「確かに……。愛川姫乃なんて、まさか本名とは思えないっていうか……。男の子の名前にしては可愛過ぎだものね」
美樹がくすっと笑って言った。

「けど、本人にしたらショックだったんじゃないかな」
春那が気の毒そうな目をして言った。
「でも、こうなったら署名でも何でもして応援するしかありませんよ。そうだ。僕、伯父さんにも頼んでみます。ニューサマーホテルのレストランのシェフをしてるんですよ。あそこなら人が大勢いるし、たくさん集められると思うんです」
春那がぽんっと膝を打って言った。

「ニューサマーホテルだって? まさか、あのフレンチレストランの?」
ハンスが訊いた。
「はい。ご存じですか?」
「僕はまだ行ったことはないんですけど……。よろしければその人、紹介してくれませんか?」
ハンスが身を乗り出して言った。
「ええ。いいですよ。何かあるんですか?」
「ちょっとお願いしたいことがあるんです」
「わかりました。この時間なら家にいるかなあ?」
春那は早速携帯のアドレスから伯父に電話を入れた。


話は恐ろしいほど順調に流れて行った。客達が帰ると美樹がハンスに笑い掛けた。
「ね? 春那君って思ったよりも感じのいい子でしょう?」
「そうですね。いろいろ協力してもらっちゃったし、今度お礼しなくちゃね」
ハンスの言葉に彼女もほっとしているようだった。
(それにしてもすごいな。何だかあっと言う間に話が決まって行く。これも皆、ハンス先生や美樹さんの人脈の広さなんだろうな。みんなが協力して彩香さんのこと考えてくれてるのに、僕には何ができるんだろう? 何もできない。このままでは本当に僕……)
井倉はしょんぼりと肩を落とした。

そこへまたドアチャイムが鳴った。時計はもう、とうに10時を過ぎている。
(こんなに遅く……。誰だろう?)
井倉が出ると、そこにはルドルフが立っていた。
「遅くにすまん。ハンスに用がある」
「あの、またお仕事ですか?」
「ああ。悪いがあとでコーヒーを頼む」
「はい」
井倉が返事をすると、ルドルフは奥へ向かった。
(いつもながら、この人は険しい雰囲気だな。一口に外国人と言ってもいろんなタイプの人がいるんだ)
井倉はコーヒーメーカーをセットしながらぼんやりと考えていた。

「傷はどうだ?」
ルドルフが弟を気遣う。
「大丈夫。けど、日本の警察も何やってるんだろ? あんな学生一人に手間取っててさ」
ハンスが不満をぶつける。
「だが、ヒントはあったろ?」
「まあね。でも、あれだけの映像じゃ特定できないよ」
「新たな情報を掴んだんだ。今度は確実に抑える。犠牲者が出てからでは遅いからな」
「いつ?」
ハンスの言葉を兄が手で制す。井倉がコーヒーを持って来たからだ。彼らは必要以上に周囲を警戒しているように見えた。

「どうぞ」
井倉がカップをテーブルに置いた。
「ありがとう」
ルドルフが礼を言って一口飲んだ。
「ああ。井倉君、あとはもういいから、先に休んでてください」
ハンスが言った。
「はい。そうします。おやすみなさい」
「おやすみ」
二人が言った。
聞かれてはいけない話なのかもしれない。井倉は頭を下げるとそのまま階段を上って自分の部屋に戻って行った。

(今日も一日忙しい日だったな。けど、忙しい方がいい。動いていれば、気を紛らわすことができるから……)
「彩香さん……」
壁の向こうに彼女はいない。
いつの間にか、外には雨が降り始めていた。微かに雷鳴の音も響いている。もう梅雨が明けようとしているのだ。